防災・避難所ワークショップ(参加型体験学習)記録

日時:平成25年2月6日(水) 午後1時30〜4時
場所:千葉コミュ二ティ−センター5階 美術・視聴覚室
共催:市民ネットワークちば 防災・避難所プロジェクト

 ある日、突然巨大地震が発生した、避難民が防災避難所に押し寄せ大混乱になった、という前提であなたならどうする、どういう行動をとるか、という前提で避難所運営のワークショップが行われた。 集まった人達は千葉市の自治会の役員さん、避難所運営を立ち上げた自治会+避難所運営を準備中の158の自治会に参加を呼びかけ、 30の自治会役員さん達と主催者側、千葉市防災課の職員を含め、40名で避難所運営の参加型体験学習が行われた。
 こうした災害に備える緊急避難訓練は、小規模から大規模までいろいろ行われているが、地域住民のリ−ダ−が参加した避難所運営のワークショップ(体験型学習)は、 まだ各地でようやく始まったばかり、いつ起こるかもしれない巨大地震に備えた心構えと準備だけは、どうしても必要との実感を強くした体験学習であった。2時間30分行われた避難所運営ワークショップの内容の概略は次の通り。


総合司会・山田代理人(防災プロジェクトメンバ−)
本日の主旨とテーマを紹介
      (1) 災害時の基礎知識と避難所運営の考え方
      (2) ケ−スタディ− あなたならどうする、各グル−プに分かれる。
      (3)千葉大学学生達による防災への取組み

講演 「災害時の基礎知識と避難所運営の考え方」
   講師:東日本女性支援ネットワーク 福田紀子さん
       ・国、自治体、団体などへ避難所や防災に関しての提言を行っている。
       ・ワ−クショップなどのファシリティ−(効率的な管理マネ−ジメント)のほか、
        行政の職員と共同で男女共同参画センターで活躍中。
講演内容要旨
1  災害の基本は、地域の中で誰に対しても気軽に声をかけられるかどうか。
2  お互いを守り、自分をも守ることができるかどうか。
3  人間は保守的な動物、自分のテリトリーを守ろうとする。
4  来るものは拒まず、知らない人にも声をかけられる、これは災害時の基本。
5  地域にこういう人が多くいることが、防災力となる。


* いざという時に、どのくらい機敏に動けるか
 そこで実験が始まる。1つのテーブルに6人位、6グループに別れ、持ち時間1分で何人に声をかけられるか、結果は少ない人で4人(自分のテーブルだけ)平均で声をかけられたのは7人までとなった。全員が名札を胸につけていたが、名前を覚えていた人はごく僅か、持ち時間1分では無理かもしれないが、災害時にはこれが大事、自分の周りに、この人なら大丈夫と言うひとを瞬時に見つけられるかがポイント。


6  災害のタイプはいろいろある。地震発生時の対応で被害の影響は違ってくる。
7  まずは自ら生き延び、支援者の立場にすぐ変われるのか、ふだんの訓練が必要。
8  東北大震災では小学生が群馬県の大学と提携、津波教育を徹底的にしていた。ただ逃げるだけで
   なく、エネルギーの固まりにどう対処するか、地域の弱者への目線もつちかった。
9  結果はこの学校の小学生に死亡者は誰一人もいなかった。神戸は備えがなく多くの子等を失った。
10 災害時には自助が大切、神戸の死亡者は80%が自宅で死亡。凶器はマイホームにある自覚を。
11 避難所にいかずに、広い家、庭のある家にグループでいるケースが出てくる。目配りが必要。
12 一度は避難所に行っても何かの理由で、出て行く人が出てくる。雰囲気つくりに気をつける。
13 方角感や言葉の問題で外国人は動けないケースがあった(神戸地震)配慮を考える。
14 避難所に行く理由は雑多、一人で不安、皆の話で自分なりに判断したい。食べ物、オムツ等を貰えるから。
15 避難所の問題点
  @ 狭いところで動かないと、血栓が起こりエコノミークラス症候群で亡くなる人が出てくる。
  A トイレ等、衛生の問題、我慢する・水分補給の不足で循環器系病気で死亡するケース。
  B 人の目を嫌い、着替えが出来ず、特に女性の場合は精神的、肉体的疲労障害で死亡も起こる。
  C避難所リーダーは女性だけの居場所を確保するなど、環境整備に力を入れる。
  D雰囲気を嫌い避難所を何回も変える人が出る。ストレスで健康を害する、お互いの支え合いが大事。

その他の課題と問題点
1  東京直下型大地震では650万人の帰宅困難者出ると言われている。こうした人達が避難所に来たらどうするか、
   ルール等を考えておく。
2  地域のリーダー達は、女性の為の人目のつかない居場所、安心して過ごせる場所を作ってあげる。
3  政府は無理して帰らない、安全な場所で待機するように、と言うが、水、トイレはどうするのか。
4  親の帰宅困難で一人っ子の場合、子供の支援をどうするのか、パニックを避ける地域の力が必要。
5  公的な支援は公的な場所にしか届かない。他の場所からの要請も含め公平な分配を避難所の役員、世話役は
   できるのか。

6  自助、共助が機能していて、情報ルートができていれば、公的支援が行き届きやすい。
7  共助を受けるには自分たちの置かれた状況、個々の人のニーズを掴んで置かないと、支援が混乱する。
8  災害に備えた様々なシナリオ、パンフレットがあふれている。地域にあったものを大事にする。
9  災害専門の伝言ダイヤルは1日と15日はオープンとなっている。伝言の受信をテストし体で覚えておく。
10 避難所を含め支援しあう国際基準がある。尊厳と権利を守り、48時間以内に支援しあう公的基準。
11 女性への視点が大切、避難所の役員は女性も入る。自治会の防災担当は男女一人づつが鉄則。
12 避難所トイレ数の国際基準は、女性用は男性の3倍。少なくても2倍は確保し、位置は離す。
13 女性が発言でき、相談できるコーナーを設置し、男女共同参画とする。女性相談員を置く。

以上が講師の講演主旨。避難所の運営について、混乱の中で何がこれまで問題が出ていたのか、神戸、東北大震災で実際に起こった事例を説明した。数多くの事例を聞くと、大混乱の中ですばやく対応できるか、機敏な行動力と気配り、とっさの判断力をどう養うか、一人一人に重い課題がつきつけられた。

講演後、防災プロジェクトメンバー・金田由希さんの発声で、実際に災害が起こったことを想像してグループごとに避難所での無理難題をどう解決するか、ケーススタデイ「あなたならどう解決する」のグループディプごとに避難所での無理難題をどう解決するか、ケーススタデイ「あなたならどう解決する」のグループディダーを決めて6グループずつ、持ち時間2分で発表が行われた(事例は実際に起こった話)


<あなたが想像する場面>
午後2時、巨大地震発生、回りは火災、うずくまり、立ちすくむ、帰宅困難者も続出、親子が離れ離れに、避難所は大混乱、非常食も足りない、下水道はかろうじて動くも水道・ガスはストップ、避難所の小学校は薄暗い、飼い犬、飼い猫、盲導犬もいる、仕切りもない、市職員は一人しか来られない、等々・・・小学校には生徒が300人、お年寄り、乳幼児、体の悪い人、不安と恐怖で自失呆然の女性達・・・・ 4〜5日、1週間たつといろいろな問題が起こってきた。

*赤ちゃん、子供用品不足を母親が訴える
*生理用品・下着等の配分が不公平、女性に不満が
*赤ん坊の夜泣きがうるさいと怒鳴られた母親が泣いて訴えた*体育館の倉庫を女性用更衣室、授乳室にしようとしたらそこに
  いた住民からどかないと怒鳴られた
*住民から耳の聞こえない人が情報(食事の知らせなど)が伝 
  わらないで困っているようだと言われた
*夜の仮設トイレの途中に男がいて、校舎の影で体をさわられ
  そうになったという噂が立っていた
*避難所以外にいる若夫婦に赤ちゃん用のオムツなどを渡して
  いいのか(実際にあった話)
*ペットを一定のところにつなぐことになったが、
 盲導犬を連れてきた人が、離されては困ると言
 われた
*食物アレルギーの子どもを持つお母さんから食
  べ物の苦情
*外国人一家から言葉がわからない、宗教上の
  理由で食べられないものがあるとの要望
* DV(配偶者間暴力)から逃げてきた母親が避
  難者名簿に載せないでと言ってきた。
  どうする?

コーデイネーター(金田由希)の「皆さんは避難所運営に携わる地域の要、自分が行き残るのが基本、生き残って地域の人を助ける側に回る立場、日がたつにつれさまざまな事が起こってくる。@なにをしなければならないか A話し合いで何を共有しなければならないか B避難所全体をどのように把握したらいいか、リーダーを決めて、明日避難所に貼る「壁新聞」に何を書いて知らせるか、急いでまとめる」との合図でグループ討議が始まった。

* 話し合いで考慮していただきたい点をコーデイネーターが示す
@ 避難者全体を、どう把握したか
A リーダ−を決め、組織を作り、状況も把握する
B 避難者カードというのをを知っておく
C 妊婦や、体の悪い人に気をくばる
D 人の出入りが多いので、名簿は簡単にする
E 名簿はグループに分け、個人情報に配慮する
F 名簿作成に異論が出ないとも限らない。各地域の避   難所運営訓練で、避難所カ−ドを書いて試してみる
G 食料、水は大丈夫なのか
H トイレが被害でない時は、どうするのか
I 3時間経過し、大混乱になっていたら
J 現場によっては、頭で考えていたのと違っていたら
K 情報をどう取るのか
L 負傷者の手当をする人は
M トイレの水を使えないとしたら 
N 食料の公平な分配の仕方

第2グループの発表
 1 避難民カードを作成、個人情報でうるさいことを民生委員が言ってきても、無視する。
 2 誰がまとめるか(リーダー)これが大前提、看護師さん等。自由に意見を出す。
 3 弱者を介護する人、情報を伝える人、障害者の世話役、などの連絡、情報係
 4 物資の配分は均等にいきわたるようにする。
 5 リーダーは女性、弱者に行きとどく人。強引に力で有利を諮ろうとする人をコントロールできる人。
 6 誰でも自由に、口コミでもいいから書ける伝言版を設置する。

第4グループの発表
 1 個人名を入れた組織図を作る。
 2 標語を作る、時間割も作成、避難所内の地図(トイレ、犬・猫の置場、赤ちゃんルーム、など)
 3 医療、介護が出来る人を呼びかける、手話、英語の出来る人を載せる。
 4 外の情報を知らせる、噂に惑わされないよう確実な情報につとめる。
 5 情報は毎日、更新する。
 6 女性の担当者を決め、女性用品を配る担当者を決める。
 7 動けない人を支援したり、意見を吸い上げたりする見回り係りを決める。
 8 赤ちゃんのいる人には更衣室、仕切りなど、校舎にある場所を利用する。
 9 盲導犬はみんなの合意を取っていったらいいのでは。

第1グループの発表
 1 女性リーダーを立てて、例えばパ−テーションをつくる。
 2 伝言版を作って、有意義と思われる情報を書いて知らせる。
 3 いろいろな問題の共有化をはかる努力をする。
 4 ボランティアを募集する、特に語学など特技を持った人を募る。
 5 組織図を作り、リーダー名、役割分担表(担当名入り)を知らせる。
 6 リーダーからのメッセージコーナーを作る。例えば女性はトイレは二人で行くとか。
 7 避難所以外へも物資が行くことになっていることを、知らせておく。
 8 実際には事前に避難所のマップはできているので、すぐに貼り出しておく。

コーデイネーターの中間コメント
 1 食料、水が足りない、どう分けるか、正解はない、公平にした例はある。
 2 高齢者、乳幼児に優先的に分ける方法もある。弱者に優先しても、備蓄はすぐになくなる。
 3 だから、自宅の備蓄が重要となる。
 4 情報をどう取るか、混乱の中で来ないかもしれない、携帯ラジオ(電池)懐中電灯は必需品

第5グループの発表
 1 リーダー(男女一人ずつ)を決め組織を作成、役割分担を決める。
 2 婦人班を設置、情報共有のための情報班を設置、避難者名簿作成。
 3 避難所以外へもいきわたるよう、アナウンスをしておく。
 4 質問、相談、電話の各コーナーの場所を明示しておく。
 5 医療関係(怪我など)介護のボランティアを募る。
 6 レイアウトはさまざまな配慮が必要、動物は外で居場所を決める。
 7 盲導犬は皆の理解が得られるよう、働きかける。
 8 部屋割りは病気の人、赤ちゃんなど、弱者に配慮、部屋は男女別にする。
 9 備蓄品の配布品コーナーを作る、安全確保のために夜の見回り当番を決める。
 10 校庭にプールがあれば、水とそこにあるものの利用方法を考える。
 11 アレルギーの人は申し出てもらう。

第6グループの発表
 1 情報掲示板を作る。
 2 医師、弁護士を募り、女性にもリーダーになってもらう。
 3 動ける人を募集する。「困りごと掲示板」に困ったことを書いてもらう(赤ちゃんの夜泣きなど)
 4 自分で抱え込まず、オープンにして皆で解決できるようにする。
 5 案内窓口を常時開設、避難者を誘導できるようにする。怪我人情報を出す。
 6 利用マップ(更衣室など)と運用ルールの明文化を
 7 アレルギーの人への、その日の献立表コーナーを作る。
 8 怪我人の情報も掲示する。


コーデイネーター(金田由希さん)の総評
* 避難所では無理難題が出てくる。人が押し寄せた場合は、先に来た人がどかないことが起こってくる。避難所の
  リーダー達は、理由をつけて、いったん皆を外に出し配置換へをしなおすのも一策。
* 女性への暴力は許さないとのメッセージを出し、照明の確保が難しいだけに見回り役を決めておく。
* トイレは男女分け、障害者用などの広いユニバーサルトイレが必要、暴力は許さないというメッセージとなる。
* 壁新聞には被害者からの相談窓口を書いておく。DV名簿が見つかってしまったケースがあった。
  身の危険もありうるので、本人に公開の有無を確認しておく。
* 在宅避難者にも支援することを伝えることが必要。家を失った人、来られない人には気使いながら対応する。
* 女性リーダーをすぐに出せないことも起こってくる。普段からリーダーを養成しておきたい。
* 障害者、女性などは声をあげにくい。地域で声をだせる習慣を身につけておけば防災に役に立つ。


<若者たちによる防災の取り組み>   千葉大学学生の「現代西千葉会議」
千葉大学建築デザイン科在学中の2人による西千葉での地域活動が熱っぽく語られた。
    @ 西千葉は千葉大学のキャンパスを中心とした学園都市
    A 現代西千葉会議は私たち建築科の学生でH23年秋に結成
    B メンバーは西千葉界隈の種々雑多な価値観も違う人達、年齢は関係なし
    C 大工、学生、バー経営者、放射線技師、新聞配達、美術家、理容師など
    D 枠にとらわれず、縦割りでなく、横串を刺すように西千葉をよくしようとする人たち
    Eカフェバーに集まって、皆でなにかやろうと談論風発
真の目的
    1.西千葉という街を楽しくしたい
    2.キーワードは防災
    3.挨拶の出きる街にすれば、防災につながる
    4.歩いていれば、挨拶が返ってくる街
    5.いろんな人が集まって、楽しくなる街
    6.何かあったら、協力できる街(たとえば防災)
    7.お互いに顔が見える街
    8.西千葉にこだわる会
    9.誰でも入り、来られる会
    10. 地域ポスターを作成、あちこちに貼り出す
    11.自治会の人と何が出来るか、発信力を高めたい
    12.地域ポスターで自治会と一緒にやっている姿を出していきたい
    13.若い僕らで自治会同志を柔らかくつないでいけないか、提案している
    14.緑町、黒砂、松波町のお祭り、盆踊りに参加、ポスターで住民に出している
    15.自治会の役員などと公園の掃除、運動会に参加、住民のニーズがわかり、信頼が産まれて来る。
       これを大きくして何か提案していきたい。
    16.地域の人たちと信頼関係が高まれば、地域の防災力が強くなる
    17.その1つの方法として、防災グッズを作ってTVでも紹介された。
    18.製品は「ロケットストーブ」 1斗缶を改造、中にダクトを通して、その周りに断熱材を入れる、薪を入れると
       中で上昇気流が発生、普通の煙突の何倍もの火力が出た。
    19.簡単で誰でも作れる。防災用として、日常生活用として、警察で実験してもらい認められれば防災グッズとして
       避難所におけないか提案を考えている
    20.二つ目の防災用品として「わらの家」を提案した。稲毛のイオンモールで展示した。
       子どもに大人気で、ポスターで紹介もした。竹を組んでワラで覆ったロボハウス、縄文時代に逆戻りした感じだ
       が、避難所で居住空間を体験してもらいたい
    
◎ 寸評
とてもユニークな若い人達の発想には、大人にはない、明るい未来を感じさせるような感慨さがあった。年齢に関係なく、地域の力を20歳前後の若い力で結集しようとしている姿には暗い話ばかりの時世に、ほのぼのとした痛快さを味わった。

総合司会の山田代理人も結語で、若い人達が地域力をつけようとしている努力に敬意を示された。

今回の避難所ワークショップは、避難所で何が起こったか、実例を挙げての資料には、現場の問題提起が目に迫るよう
で、迫真力があった。プロジェクトメンバーののご努力がワークショップの効果を、いずれ実りあるものにすると思っている。


* 配布資料
(1) プロジェクトチーム作成「こんな時どうする!?避難所での無理難題!」

(2)災害時の基礎知識と避難所運営の考え方
  東日本大震災女性支援ネットワークの活動を通して
  講師: 福田 紀子
    東日本大震災女性支援ネットワーク
    研修プロジェクト マネージャー

                                                    

BACK   HOME